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執筆者の写真フクタタカユキ

投資のリターンを構成している要素を分解してみる

こんにちは。フクタです。

本日は「リターンと一口に言うけど、そのリターンはどういう構成要素から成り立っているのか?」ということについて解説していきたいと思います。

まずはざっくりとですが、投資のリターンは以下の式で表すことが出来ます。


リターン=ベータによるリターン+アルファによるリターン


「ベータ」とは「ベンチマークの値動きとの連動性を表す指標」のことで、「アルファ」とは「ベンチマークの値動きとの連動性では説明出来ない独自の値動きを表す指標」のことです。ちなみにベンチマークとは運用対象となっている資産クラス全体の値動きを示す代表的なインデックスのことで、日本の大型株なら「日経平均・TOPIX・JPX日経400」のことを指し、日本の小型株なら「JASDAQ平均・JASDAQ指数・マザーズ指数」のことを指し、アメリカの大型株なら「S&P500・ダウ工業平均」のことを指し、アメリカの小型株なら「NASDAQ指数」のことを指します。

つまりは上記の「ベータによるリターン」は「マーケット全体の値動きとの連動によってたまたま生み出されたリターン」と言うことが出来、「アルファによるリターン」は「マーケット全体の値動きとの連動では説明が出来ない、実力によって生み出されたリターン」と言うことが出来ます。

我々トレーダーが追求しているのは言わずもがな後者の「アルファによるリターン」で、いくら莫大なリターンを稼いだとしてもそのリターンの大半を構成しているのが前者の「ベータによるリターン」なのであればそんなに嬉しくはないです。なぜならば「ベータによるリターン」で稼ぎ出したリターンはマーケット全体がたまたま好調だったからこそ得ることが出来たリターンなので、今後マーケット全体が崩れた時には一銭も稼げなくなるどころかそのしっぺ返しで莫大な損失を食らう可能性があるからです。

このことについて具体例を挙げて説明します。仮に以下のような2つの取引があるとします。


★取引A

リターン:+20%

ベータ:+0.10

ベンチマークのリターン:+20%


★取引B

リターン:+60%

ベータ:+3.00

ベンチマークのリターン:+20%


そしてこの取引A・Bの「ベータによるリターン」と「アルファによるリターン」は以下のように計算が出来ます。


★取引A

ベータによるリターン

=ベンチマークのリターン×ベータ

=20%×0.10

=+2%


アルファによるリターン

=リターン-ベータによるリターン

=20%-2%

=+18%


★取引B

ベータによるリターン

=ベンチマークのリターン×ベータ

=20%×3.00

=+60%


アルファによるリターン

=リターン-ベータによるリターン

=60%-60%

=±0%


単純にリターンだけを見れば「取引Aよりも取引Bの方がパフォーマンスが良い」という判断になりますが、そのリターンの構成要素である「ベータによるリターン」と「アルファによるリターン」に分解して見てみた場合には、取引Aはリターンの大半が「アルファによるリターン」で構成されているので「銘柄選択・マーケットタイミング・分散などの何がしかの実力によってリターンを獲得している」という可能性が高いのに対して、取引Bはリターンが全て「ベータによるリターン」で構成されているので「たまたまマーケット全体が好調だったから、たまたまリターンを獲得している」という可能性が高いです。

そして上記はベンチマークのリターンがプラスでしたが、次にベンチマークのリターンがマイナスの場合には取引A・Bの想定リターンがどうなるかについて見ていきましょう。


★取引A

ベンチマークのリターン:-20%

ベータ:+0.10

アルファによるリターン:+18%

リターン

=アルファによるリターン+(ベンチマークのリターン×ベータ)

=18%+(-20%×0.10)

=18%-2%

=+16%


★取引B

ベンチマークのリターン:-20%

ベータ:+3.00

アルファによるリターン:±0%

リターン

=アルファによるリターン+(ベンチマークのリターン×ベータ)

=0%+(-20%×3.00)

=0%-60%

=-60%


ベンチマークのリターンがプラスだった場合には取引Aよりも取引Bの方がパフォーマンスが良かったですが、ベンチマークのリターンがマイナスの場合には取引Aはベータの低さとアルファのリターンのプラスによってマーケット全体が軟調であったにも関わらずプラスのリターンを出せているのに対して、取引Bはベータの高さとアルファのリターンがゼロであることが仇となってボロボロのパフォーマンスになっています。

このような事態が想定されるからこそ、我々トレーダーは「ベータによる莫大なリターン」よりも「アルファによるそこそこのリターン」の方を追い求めているのです。


以上がざっくりとしたリターンの構成要素の解説でしたが、リターンを構成する最重要要素であるアルファについては更に細かく構成要素を分解することが出来ます。

具体的にはアルファは以下の4つの要素で構成されています。


・銘柄選択によるアルファ

・ロングorショートの方向感によるアルファ

・マーケットタイミングによるアルファ

・買い方(売り方)によるアルファ


まず一つ目の「銘柄選択によるアルファ」ですが、これはいくつもの銘柄の中からロング(買い)の場合はより上昇する銘柄を、ショート(空売り)の場合はより下落する銘柄を適切に選び出すことが出来ることによるアルファになります。なのでこのアルファは「銘柄の良し悪しを見極められる能力」と言い換えることが出来ます。そしてこのアルファは投資対象が個別銘柄の場合にインデックスと比較することで検出が出来るものになっており、投資対象がインデックスファンドの場合にはそもそもインデックスと比較することが出来ないので検出は出来ません。

二つ目の「ロングorショートの方向感によるアルファ」ですが、これは特定の銘柄に投資するにおいて、適切にロング(買い)orショート(空売り)の実行が出来ることによるアルファになります。このアルファは「投資対象の上昇or下落を見極められる能力」と言い換えることが出来ます。このアルファは投資対象の元の値動きと比較することで検出が出来るので、投資対象が個別銘柄でもインデックスファンドでも検出が可能です。

三つ目の「マーケットタイミングによるアルファ」ですが、これは特定の銘柄をロングorショートするにおいて、デイトレードなら一日の内の特定の数秒間~数時間、スイングトレードなら特定の数日間~数週間、長期投資なら数か月~数年間と、連綿と続くマーケットの時間軸の中で利益が出せる特定の時間軸を適切に選び出すことが出来ることによるアルファになります。つまりはこのアルファは「投資する時間軸を見極められる能力」と言い換えることが出来ます。このアルファは投資対象の元の時間軸と比較することで検出が出来るので、投資対象が個別銘柄でもインデックスファンドでも検出が可能です。

四つ目の「買い方(売り方)によるアルファ」ですが、これは特定の銘柄を特定の時間軸でロングorショートするにおいて、適切に投資金額を変動させることが出来ることによるアルファになります。このアルファは「投資金額の適切な賭け方を見極められる能力」と言い換えることが出来ます。このアルファは投資対象を単利で運用した場合のリターン&複利で運用した場合のリターンと比較することで検出が出来るので、投資対象が個別銘柄でもインデックスファンドでも検出が可能です。


そしてなぜにここまでアルファを分解する必要があるのかと言うと、それは「その取引が負っている不確実性を特定するため」になります。

例えば然るべき銘柄に然るべきマーケットタイミングで然るべき金額を投資をすることによって「銘柄選択によるアルファ」「マーケットタイミングによるアルファ」「買い方(売り方)によるアルファ」の3つがプラスだったとしても、その取引がロングオンリーであった場合には「ロングorショートの方向感によるアルファ」はおそらくプラスにはなっていないので、「銘柄の良し悪しと投資する時間軸と投資金額の賭け方を見極められる能力はあるのかもしれないけれども、投資対象の上昇or下落を見極められる能力があるのかどうかはわからない」ということが言えると思います。この場合はその取引が負っている不確実性は「投資対象の上昇or下落を見誤まらなければ利益が出るが、見誤った時には損失が出る」というものになります。

ちなみにこれのよくある例が「○○という銘柄を買ったらその株価が5年後に30倍になったことで大金持ちになった投資家」です。

もちろんその投資家は「大金持ちになれるほどのリターンを獲得した」という点で結果を出しているのでそのこと自体は評価ポイントではあるのですが、もしその投資家が外部から資金を集めてファンド運用することになり、そのファンドに投資をしようと思った場合には「いくつもの銘柄の中から○○という特定の銘柄を選び出し、かつその銘柄を保有する時間軸は別に数秒でも数分でも数時間でも数日でも数週間でも数か月でも良いにも関わらず5年間保有するという選択をし、そして都度適切に投資金額を変動させていたという点で、銘柄の良し悪しと投資する時間軸と投資金額の賭け方を見極められる能力はあるのかもしれない。しかしロングオンリーだったことから投資対象の上昇or下落を見極められる能力があるのかどうかはわからないため、投資対象の上昇or下落を見誤った時には損失が出る可能性がある」ということを念頭に置いた上で投資した方が良いと思います。


まあ、色々とゴチャゴチャと述べてきたんですが、とりあえず覚えておいて欲しいのは「その取引によって実現したリターンだけを見ても、その取引が特段優れたものなのか、そうでもないものなのかは判断が出来ない」ということで、もし何か特定の取引をしたりはたまたファンドに投資をしたりする時には「リターンがどの種類のリターンで構成されているのか?」まで見ることで、自分の中でより納得感が高い投資が出来るのではないかと考えています。


長くなりましたが本日はここまでです。

どうもありがとうございました。

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